【競技かるた】細かいルール・マナー・慣習のまとめ 〜 大会で気持ちよく試合するために

本記事では、競技かるたの明文化されていないマナーや慣習をまとめています。

他会(自分が所属している会とは別の会)の練習に参加する時や大会に出場する時に一度は目を通しておくと安心です

マナー・慣習は会や人によって微妙に言うことが違います。そのため、聞いたことない話もきっとあると思います。
知っておくだけで、”大会でいきなり注意される” “恥ずかしい思いをすること”を防げるかもしれません。

この記事の概要

他会の練習に参加する、競技かるたの大会に出場する

  • 一度は目を通してほしい記事です
  • 競技かるた界の明文化されていないマナー・慣習がわかります
  • 関連する禁止事項や明確なルールもわかります

なお、本記事はオンライン部活動「Karuta Club Room」のプロジェクトとして、部員一同で内容を精査・検討したうえで執筆しています。

複数人で意見を交わすことで、できる限り競技かるた界のみなさんの意見を反映したつもりです。

しかし、もしかすると異なる意見の方もいらっしゃるかもしれません。その点についてはご了承いただけますと幸いです。

もし、記載内容にご意見などがございましたら、「Karuta Club Room」の部員として一緒に検討していただけますと非常に心強いです。より正しい情報が伝わる記事にすることができると思います。

Karuta Club Room についてくわしく

また、ご意見についてはフォームでも受け付けております。いただいたご意見については、Karuta Club Room にて内容を精査・検討させていただきます。

注意事項

本記事は、2022年4月19日時点の一般社団法人全日本かるた協会の競技規定(最終更新日:平成31年3月31日)、競技規定細則(最終更新日:令和2年5月26日)に記載の内容に則り、ルール・マナー・慣習を整理しています。
更新があった場合は速やかに更新するようにいたしますが、最新のルールについては、全日本かるた協会のホームページをご確認ください。

マナー・慣習の基本的な考え方

マナー・慣習は明確にルールにできない内容です。そのため、どうしてもあいまいな部分が残ってしまいます。

しかし、マナーや慣習がどうして存在するのか理解していれば、迷った時の指針にすることができます。

以降でまとめたマナーや慣習を見てみると、そのほとんどが以下の2つの基本的な考え方に沿ってできたものだと考えられます。

マナー・慣習の基本的な考え方

  • 対戦相手が気持ちよく試合できる
  • 試合進行をスムーズにする

当たり前に感じるかもしれませんが、特にこの2つは肝に銘じて大会や練習に参加していただけると大変助かります。みんなが気持ちよく競技かるたができるよう、ご協力をお願いいたします。

試合中の所作

日本の伝統文化である競技かるたは、常に美しい所作が求められます。

映像が海外にも流れる時代だからこそ、今いちど確認しておきましょう。

座り方

競技かるたでは、必ずしもずっときちんと正座をしている必要はありません。正座の姿勢から足を少しずらして崩す分には全く問題ないでしょう。

ただし、立て膝や体操座り、足の投げ出しなどはルールで明確に禁止されているので注意が必要です

正確なルール

競技者は、競技場内で着席している際は、正座もしくは正座に準じた姿勢でいなければならない。ただし、暗記時間中は姿勢を崩すことができる。

暗記時間中に姿勢を崩すときも、立て膝や体操座り、足の投げ出しなどはいけない。

一般社団法人全日本かるた協会「競技規程細則」第二章 第五条(着座姿勢)より引用

暗記時間中に「あぐら」はかいてもよいでしょうか?
暗記中であっても、あぐらをかくのは賛否両論あり、不快に思う方も一定数います。そのため、あぐらは控えるように指導している会も存在します。

礼節

競技かるたには「礼に始まり礼に終わる」という武道に通じる教えがあり、「かるた道」と言われることもあります。

対戦相手に敬意を払い、勝敗だけでなく礼節を重んじる姿勢が大切です。

正確なルール

競技に際しては、互いに相手を尊重するとともに、礼節を重んじなければならない。

一般社団法人全日本かるた協会「競技規程細則」第二章 第三条(礼節)より引用

具体的には、以下のタイミングで礼(おじぎ)をします。

礼をするタイミング
  1. 競技開始時
  2. 競技終了時
  3. 席を外す場合

❶競技開始時

対戦相手が決まって着座したら、相手の顔を見て「(よろしく)お願いします」とあいさつをしましょう。
補足手で三角を作り鼻をその中につけるくらいの気持ちでおじぎをすると丁寧です。

「札を並べてください」の合図で、競技札を混ぜる前に対戦相手との間に札(箱)を置き、「(よろしく)お願いします」と言って礼をしてから札を混ぜ分けるようにしましょう。

審判長が「競技を開始します」と言ったら、対戦相手に「(よろしく)お願いします」と礼をします。

次に読手に「(よろしく)お願いします」と礼をします。

礼をする時は、相手の方に身体ごと向き、顔を見て「(よろしく)お願いします」とはっきり言い、頭を下げるようにしましょう。

暗記に気をとられ、札を横目に見ながら礼をすることがないように注意です。

審判がついた時

大会では審判員がつくことがあります。

その場合は、対戦相手→審判員→読手の順に「(よろしく)お願いします」と礼をします。

試合の途中で審判員がついた時は、その時点で「(よろしく)お願いします」と礼をしましょう。

❷競技終了時

試合に決着がついた時も、競技開始時と同様に対戦相手→(審判員)→読手の順に、顔を見て「ありがとうございました」と言って礼をしましょう。

札の紛失、違う札の混入がないかを確認した後、札(箱)を相手との間に置き「ありがとうございました」と言って最後の礼をしましょう。

裏面に使っている札の目印が書いてあります
5枚ずつ束にすると数えやすいです

試合終了時の注意点

  • 最後に払って取った札は、必ず礼をした後で拾いに行く
    注意札を拾ってから礼をすると指摘されることが多いです。練習の時から徹底するように心がけましょう
  • 相手陣を取って試合に決着がついた場合は、必ず札を送ってから礼をする
    注意こちらも指摘されることが多いです。また、運命戦だと相手の勝ちと判断されてしまう可能性があります。

❸席を外す場合

15分間の暗記時間中に席を外す場合や、試合中にやむをえず席を外す場合は、対戦相手に「失礼します」と言って礼をしましょう。また、席に戻ってきた時も「失礼しました」と言って礼をしましょう。

正確なルール

競技者は、競技開始時、ならびに競技終了時に、対戦者、読手の順に礼をすること。

  • 審判員が個別の試合についた場合は、対戦者、審判員、読手の順に礼をすること。
  • 礼の際は、相手の方に身体ごと向き、顔を見て、「お願いします」「ありがとうございました」とはっきり言い、頭を下げる。
  • 試合の途中から審判員がつく場合は、その時点で審判員に礼をすること。

暗記時間中、競技中にその場を離れる際や戻る際には、対戦者に対して礼をする。ただし、払った札を取りに行く場合はこの限りではない。

  • 「失礼します」、「失礼しました」と言って礼をする。
  • 礼を受ける側は、軽く頭を下げる程度でよい。

一般社団法人全日本かるた協会「競技規程細則」第二章 第四条(礼)より引用

札の整理

札の並べ方

札を並べる時のポイントは以下の3つです。試合進行を妨げないよう常に心がけましょう。

札を並べる時の注意点

  • 基本的に両手ですばやく
  • 読みが始まったら、並びが違う、札を紛失しているなどに気がついたとしても、そのまま試合を続ける
    注意絶対に読みは止めない
  • 取りやお手つきの判定について、相手と話し合う際は先に札を並べ終える
    補足 話し合いの仕方については、後段を参照

札をすばやく、きれいに並べるには

札をすばやくきれいに並べるために、目安札を置いても構いません。
目安札は、札を並べる際にすでに読まれた札を裏返しにして”札配置の目安とする札”のことです。

ただし、目安札は読み開始までにすみやかにしまうようにしてください。

目安札:上の図における緑色の札

▲目安札の使い方

相手陣を並べるのは手伝った方がよい

自陣の札は自分で並べるのが原則です。

例えば、自分が相手陣の札をたくさん飛ばしてしまった場合でも、札を拾って相手に渡すだけで構いません。(「失礼しました」など一言添えて札を手渡すと丁寧です。)

ただし、周囲の試合より相手陣の札が明らかに大きく散らかっている場合は、試合進行をスムーズにするために札を並べるのを手伝うことが望ましいです。

一方、目安札を置くことを含め、相手に自陣を並べられるのを嫌がる人が一定数存在します。

悩ましいですが、手伝う時は以下のようにささやかにした方が無難かもしれません。

  • 札の並び順だけ整える
  • 左右の陣の両方が散らかった時だけ、相手が並べていない反対側を手伝う
  • 相手が札を拾いに行っている間に少しだけ整える

札を拾う/拾いにいく

札を飛ばして取った場合は、札を拾いにいく必要があります。その時に気をつけるポイントは以下の通りです。

札を拾いにいく時の注意点

  • 基本的に札を飛ばした人が札を拾いにいく
  • 競技線の中を歩かない
    補足他の試合の競技線内も歩かない
飛ばした札が見つからない時

飛ばした札がなかなか見つからない場合は、以下のように札を探し、周囲に協力を呼びかけましょう。

  • 〇〇△△の札ありませんか?こちら側に払いました」と声に出して、札を探す
    補足札の裏面に札の名前が書いてあることが多いです。札の名前札の決まり字を声に出して呼びかけ、周囲の選手にも協力してもらいましょう。また、札を飛ばした方向も添えるとより親切です。
    例)「かるたんの”あきの“ありませんか?こちらの方に飛ばしました」
注意事項

対戦相手が札を探している場合は、必ず席を立って協力して札を探しましょう

また、その他の試合をしている人が札を探している場合は、以下のように協力してください。

  • 自分自身やアイテム(タオル、座布団、上着など)の下に札がないか確認する
  • 並んだ札の中に、他の試合の札がまぎれていないか確認する
  • 取った札の束の中にまぎれていないか確認する
他の試合の札が飛んできたら

試合中、他の試合で使われている札が、手元に飛んでくることがあります。
その場合は、以下のように対応するとスムーズです。

  • 〇〇△△の札を使っているところどこですか?」と声に出して、その札を使っている組を探す
    補足 基本的に、札の裏面に札の名前が書いてあることが多いです。札の名前札の決まり字を声に出して呼びかけると親切です。
    例)「かるたんの”あきの“を使っているところはどこですか?」
  • 使っている組が見つかったら手渡しをする
    注意札を飛ばしたり投げたりして渡すのはマナーとしてふさわしくありません。
  • (大会の場合)それでも見つからない時は大会役員に預ける

周囲と協力して探しても札が見つからない時は?

出札を紛失した場合

  • 探すのを中断・後回しにする
    試合が終わった後に探すか、大会の場合は役員に紛失札があることを申し出ましょう

出札ではない持札を紛失した場合

  • (大会の場合)役員に申し出て、別札を貸し出してもらう
  • (練習の場合)既に読まれた札を裏向きにして代用する
    試合が終わった後に改めて探しましょう
正確なルール

札を取るなどして、並べてある札が散逸した場合、原則として札を払った競技者が拾いに行かなければならない。

  • 札は払った競技者が拾いに行くが、対戦者もできるだけ協力する。その際、他の競技者の競技線内を歩くことは厳に慎まなければならない。
  • 散逸した札を他の競技者に渡す際には、丁寧に渡すこと。
  • 札の整理は座って行い、あぐら、立て膝、中腰等の姿勢は慎むこと。
  • 札を並べずにもめることは避け、先に札の整理をしてから話し合うこと。

一般社団法人全日本かるた協会「競技規程細則」第三章 第十二条(札の整理)より引用

札の送り方

札を送る時のポイントは以下の3つです。

札を送る時の注意点

  • 相手の方向に札をまっすぐにし、相手陣上段の真ん中付近に丁寧に置く
    注意札を引きずる、置いた後に向きを直すことがないように気をつける
    補足 送り札と分かりやすいように、上段の位置から畳の目1、2マスずらして置いてもよい
  • 相手が札を並べ終わるまで待たない
  • 送り札として札を持ち上げたら、送り札の変更はしない
    補足ルール上は相手陣で手を離すまで送り札を変更することができます。ただし、不快に思う方がいる・試合の進行の妨げとなることから、できるだけ送り札の変更はしないようにマナーとして心がけましょう。

送った札は下の図のように置くとよいでしょう。

青(あなた)、黄色(対戦相手)の場合
▲正しいふだの送り方

相手陣の上段の真ん中付近に札が置かれている場合は?

近くの空いているスペースに置きましょう。
この場合は、特に畳の目1、2マスずらして置いた方が、送り札とわかりやすくて親切です。

正確なルール

対戦者の陣にある出札を取った場合、もしくは、対戦者がお手つきをした場合、自己の持札1枚を対戦者に送ることができる。

  • 送り札は、相手陣内へ、相手の方向に向けて送るものとする。
  • 札を送る際は、あぐら、立て膝、中腰等の姿勢で送ってはならず、座り直して、きちんと対戦者に向かって送ること。
  • 競技進行上、相手が札の整理を完了するまで札を送るのを待つ必要はない。第十七条 送り札の選定 送り札の選定は送る側の任意とする。但し、送り札から手を離した瞬間から送り札の変更はできない。

一般社団法人全日本かるた協会「競技規程細則」第八章 第二十五条(送り札)より引用

手の挙げ方

静かに丁寧に手を挙げるよう心がけるとまちがいないです。

前提として、選手は基本的に読みを待たせることはできません。
特に、読みが始まった後に読みを止めることがないようにしましょう

試合進行に差し支える場合のみ、手を挙げて読みを待ってもらうことが可能です。

正確なルール

競技者は、原則として札の整理以外に読みを待たせることはできない。

  • 札の整理中に読みが始まることを未然に防ぐ意味からも札の送りは札の整理前にすることが望ましい。
  • 札の整理以外で読手に待ってもらうことが必要な場合とは、試合進行の中断が客観的合理的に必要な場合に限る(たとえば怪我をして対応する場合など)。

一般社団法人全日本かるた協会「競技規程細則」第五章 第十六条(読みの制止)より引用

ですので、読みを待ってもらう時は、読手にしっかり気づいてもらえるように手を挙げる配慮が必要です。

手を挙げる時のポイント

  • 読手に見えるよう、しっかり手を挙げる
    補足 手のひら・甲が読手から見えるように、腕を耳にくっつけて挙げるイメージです。

ただし、周囲の選手が札を拾いに立ち上がっているような時は、両手で札をすばやく並べることを優先しましょう。

周囲の選手が立ち上がっている気配がなくなった場合は、先に札を並べ終わった選手がすばやく手を挙げて、札を整理中であることを読手にアピールします。

試合中の発言

他の選手や観戦者との会話は禁止されていますし、試合をするうえで発言が必要な場面はほとんどありません(例外は以下の通り)。基本的には発言しないように心がけるとよいでしょう。

【例外】発言が認められている例
  • 飛ばした札が見つからずに探すとき
  • 取りやお手つきの判定について、相手と話し合うとき
  • 団体戦で応援するとき

独り言はよい?

独り言については、ルールとして明確に禁止されているわけではありません。しかし、相手に対する攻撃的な言動などの不適切な言動は禁止されています。

ただし、どのような発言が不適切であるのかについての具体的な指針は示されておらず、同じ発言でも人によって感じ方が違うため、線引きが非常に悩ましい問題となっています。

お互いにとって気持ちのよい試合にするため、少なくとも以下の発言だけはしないように心がけましょう

  • 対戦相手の侮辱
  • 対戦相手の取り(パフォーマンス)に関する発言
    例えば 相手がお手つきをした際に「チャンス!」と叫ぶなど
正確なルール

競技者は、以下の行為をしてはならない。
(前略)
(5)きまり字、出札、読札および送り札に関し、対戦者やその他の者に確認すること。
(6)対戦者、他の競技者、読手、審判員に対し示威牽制等不適切な言動を行うこと。
(7)競技者や観客による、競技者への応援行為。
(後略)

  • (5)原則的に競技者は、競技中、競技に関することは勿論、その他のことについても、他の競技者、或いは観戦者と話をしてはならない。読みが途中で止まった場合や、雑音等により聞こえなかった場合は、その札に関する限り、審判員に確認を求めることができるが、それ以外の札については確認できない。
  • (7)団体戦等である程度の応援が認められている場合を除き、原則として応援とみなされる行為をしてはいけない。

一般社団法人全日本かるた協会「競技規程細則」第九章 第二十七条(禁止行為)より引用

取りやお手つきの判定(話し合いのしかた)

競技かるたでは、取りやお手つきなどの判定は、基本的に対戦相手との話し合いで決定します。

正確なルール

取りやお手つきなどの判定は、原則として競技者間で決定する。

  • 競技かるたでは、競技者同士が互いの動きを良く見極めると共に、信義誠実の精神に則って冷静に主張しあい、迅速に問題解決することを旨とする。
  • 競技者は、本規程の解釈等で必要がある場合、審判員にこれを確認することができる。
  • 競技者双方の話し合いで決定できない場合、いずれかの競技者の要請により、審判員に判定を求めることができるが、審判員の下した判定には従わなくてはならない。
  • 仮に審判員が明らかに誤った判定を行なった場合であっても、その判定には従うこと。規程の解釈、運用に疑義ある場合は、後刻競技かるた部に照会することができるが、その場合であっても過去の判定が覆されることはない。

一般社団法人全日本かるた協会「競技規程細則」第一章 第二条(判定)より引用

ここでは、話しあいのしかたについて、Karuta Club で検討した守るべきマナーについて記載します。

本記事の中でも、特に意見の分かれる内容が多分に含まれますので、ご承知おきください。

心構え

まず大前提として、読みを止めて行う話し合いは試合進行を妨げることを自覚しましょう。

一試合の間に何度も話し合いを行う、長時間にわたり自分の考えを一方的に説明するなどの行為は、周囲の選手や大会・練習の運営スタッフに非常に迷惑がかかります。

度が過ぎる場合は、審判長から警告を受ける場合もあるので注意しましょう。

そのうえで相手と話し合いを行う必要がある場合には、以下の3つの心構えをもち、短い時間で簡潔に済ますようにしましょう。

話し合いにおける3つの心構え

  • 相手の話す内容を信じること
  • 自分が見た内容や感覚を疑うこと
  • 相手に誤解される取り方を反省すること

まず、相手を信頼・尊重し、話す内容について素直に受け入れましょう。

もし、自分の認識とまったく異なる内容を相手が説明している場合は、自分の見た内容や感覚を疑いましょう。

自分の目ではっきりと見ていた場合を除き、すぐに相手にゆずります。見ていないのに、その感覚を信じる理由はまったくありません。

また、目ではっきり見ていたとしても、自分の見た内容や感覚が間違っている可能性も十分にあります。人間の目や脳の機能には限界がありますし、脳が錯覚して事実と異なる認識をしてしまうこともあります。

最後に、「(相手が)取った」「(自分が)お手つきした」と思われるような取り方をしたことを反省しましょう。札直で速く、キレイに取ることができれば、自分と相手の認識にずれが生じることはありません。

自分の実力不足を恥じて、練習しましょう。

話し合いで説明する内容

話し合いの際は以下の3つのポイントをおさえ、相手に伝わるように説明しましょう。

「取った」「速かった」などと伝えるだけでは話し合いとは言えないので注意しましょう。

説明する際の3つのポイント

  • 自分と相手がさわった札は何か
    例えば どの段の何枚目の札をさわって払ったか
  • 自分と相手が札にさわったときの手の位置関係
    例えば 自分が札にさわったときの相手の手の場所
  • 自分と相手が札にさわった手の部位
    例えば 人差し指の指先でさわったのか、手の平で押さえたのか

3つのポイントがきちんと説明できない場合は、「取り」や「お手つき」のシーンをはっきり見ていたとは言えません。説明できない場合はすぐにゆずるようにしましょう。

ひと通り説明できたら、今度は相手の説明をしっかりと聞き、自分と相手の認識が違う部分を探します。

このとき、相手の説明がよくわからない場合は、先ほどの3つのポイントについて具体的に質問して確認します。例えば、以下のように質問をしてみてください。

質問の例
  • どの札から払いましたか?
  • 札にさわった時に、私の手はどこにありましたか?
  • 手のどの部分で札にさわりましたか?

質問をすることで、自分が誤解している可能性のある部分を具体的に探します。

また、相手が「取り」や「お手つき」のシーンをはっきりと見ていたか確認できる効果もあります。もし、相手の話す内容に不自然な部分や矛盾があれば、さらに質問をして確認してみましょう。

相手の説明が理解できて、それでも自分の認識と違う場合は、相手を信頼し、自分の見た内容と感覚を疑い、ゆずりましょう

ワンポイントメモ

説明や質問をしっかり行い相手の話をきちんと聞いていれば、「取り」や「お手つき」のシーンをはっきり見ていたこと、話し合いをしようとしていることが周囲にいる審判員の方に伝わります。根気よく続けましょう。

話し合いで使う言葉づかい

話し合いを行う際は、相手を尊重する言葉づかいを心がけてください。

具体的にどのような言葉づかいをするべきか網羅することは難しいため、ここでは、さけるべき言葉づかいとその代わりに使う表現の例について、代表的なものをご紹介します。

さけるべき言葉づかい
  • あなた
    →「○○さん」と呼ぶ。試合前に対戦カードを見て、必ず相手の苗字を覚えておくこと。
  • 私が先に取りました
    →一方的に主張するのではなく、「私が先に札にさわったように見えたのですが(○○さんはどうでしょうか?)」などと説明し、話し合いをしましょう。
  • それは絶対に違います
    →相手の話を頭ごなしに否定するのはNG。相手の話を聞く姿勢をもちましょう。
  • (さっきと違って)今のは取っています
    →話し合いに過去の話を持ち出すのはNG。取りやお手つきに過去の話はまったく関係がありません。
  • 動いていないけど触っています
    →基本的にはありえません。もし本当だとしても、相手にわかるような取りを心がけましょう。

話し合いはいつ始めるの?

原則として、話し合いは札の送りが発生したタイミングで始めます。

札を送られた人が受け取らず、札の送りが発生しないことを主張して、初めて自分と相手の「取り」や「お手つき」に対する認識がずれていることがわかるためです。

もし、相手から札を送られたときに「自分が札を取った」あるいは「自分はお手つきをしていない」と思ったら、送られた札は受け取らず、相手にそのように説明します。

ただし、「取り」や「お手つき」で崩れた札を並べ終わってから説明をするようにしましょう。話し合いにはどうしても時間がかかってしまう場合があるためです。

服装・装着物・アイテム

服装

競技かるたにおける服装については、まず前提となるルールを把握する必要があります。

正確なルール

競技時の服装については、対戦者並びに観戦者に不快感を与えないものを着用しなければならない。

  • 服装については、和装が望ましいが、大会等で特段の指示がない場合は、Tシャツ、トレーナー、運動着等でもよい。しかし、ショートパンツ、胸の大きく開いた服等は好ましくない。

一般社団法人全日本かるた協会「競技規程細則」第二章 第六条(服装・装着物)より引用

上記、ルールの解釈をしたうえで、以下のポイントに注意する必要があります。

服装のポイント
  • 動きやすい服装でも構わないが、対戦者が不快になるような肌の露出などは避ける

競技かるたはスポーツ性もあり、特に服装の指定がなされない場合は、Tシャツ、ジャージ、トレーナーなど自分のパフォーマンスが発揮しやすい動きやすい服装で行われることが多いです。

ただし、肌の露出が増えてしまうショートパンツや、構えの際に前傾姿勢になることも多いことから胸の大きく開いた服などは、対戦者や周りの選手にとって不快になる可能性があり、好ましくないとされていますので使用を避けましょう。

装着物

服装のほかに身に着けるものについても規定があります。普段何気なく身に着けているものがその禁止事項に当たることもあるので、注意する必要があります。

有効手

正確なルール

有効手には、着け爪、指輪等、競技中に相手に負傷させるおそれのある物を装着してはならない。

  • 有効手の爪はできる限り切りそろえておくこと。有効手は素手であることとするが、テーピング、ばんそうこうは可とする。

一般社団法人全日本かるた協会「競技規程細則」第二章 第六条(服装・装着物)より引用

有効手の装飾物のポイント
  • 競技かるたでは有効手の接触はつきもの。よって、怪我につながるような装飾物は厳禁!
  • 自分の怪我の予防・悪化防止のための保護となる、医療テープなどの装着は認められる


ルールにあるような相手を傷つける恐れのある指輪や着け爪は、うっかりつけたままにならぬよう、会場入り前に事前に外しておいてください。
ファッションとして普段から装飾物を有効手に着けている方は特に注意が必要です。

また同様に、有効手は手がぶつかり合う危険性がありますので、対戦者の取りの妨害や思わぬ怪我になりえるような、ミサンガ・リストバンドなどの手首の装飾物も禁止です。

唯一認められているテーピング・ばんそうこう類については、手の保護や怪我の手当の観点から許可されていますので、事前に接触による怪我の予防手段としての使用も可能です
万が一の怪我に備え、試合当日の携行品としておくのもよいでしょう。

非有効手なら装着物はOK?NG?

有効手に明確なルールでの規定があるのに対し、非有効手に関してはルール設定はありません。よって、普段から結婚指輪などをされている場合もでも基本装着は可能です。

ただし、自分にとっては問題ないと思われる装飾物も、対戦相手に指摘される可能性があります。
非有効手の手首に装着していた腕時計やミサンガなどが、対戦者より指摘されたケースもあるようです。指摘された場合はすぐにしまうなどの対応ができるように心掛けておくことも必要でしょう。

ひざを保護するアイテム

競技かるたは競技の性質上、ひざ立ちの姿勢になることが多く、ひざへの負担も少なくありません。
故障予防や負担の緩和、長くかるたを取り続けるためにも、ひざを保護するアイテムの助けを得るケースも多いでしょう。

これらひざを保護するための道具、いわゆる「敷き物」に関することについて、ルール上の明確な規定はありません。これに当たる具体的アイテムとして、座布団・タオル・手ぬぐい・膝サポーター、ヨガマットなどがその対象となるでしょう。

ヨガマットは使っても大丈夫?

「ヨガマットの使用の是非について」のTwitterアンケートを実施したところ、9割の方が肯定的な意見でした。

やはりルール上の設定はなく、座布団やタオルの使用が許されていて、こちらを否定する理由がないとのご意見が多く、実際に使用していらっしゃる方からは、ひざの予防には欠かせないアイテムとのお話もありました。


なお、アンケートの反対意見としては、「素材によっては劣化によって表面材がはがれ、破片等が会場の畳の上で細かいゴミとなる懸念がある」といった意見がありました

そのため、表面材がはがれないようにカバーをつけるそもそも表面材がはがれないような素材の製品を選ぶことをマナーとして心がけましょう。

またヨガマットに限りませんが、敷物の下に札が入り込んでなかなか札が見つからないことのないよう配慮が必要です。周囲で札を探している人がいた場合は、率先して立ち上がり、自分の敷物の下に札が入り込んでいないか確認するようにしてください

特にヨガマットの場合は、ひざの保護には不必要に大きいため、必要最小限の大きさに切って使用することが望ましいでしょう。

なお、和装(はかま)を着用が義務づけられる大会では、ふさわしくないアイテムと判断される可能性もあるので注意が必要です。

その他

正確なルール

対戦者の面前で揺れるものは、外す、もしくは固定すること

【補足】ネックレスやイヤリングのみならず、髪型についても、対戦者の面前で揺れる場合は、後ろで縛るなど固定すること。


一般社団法人全日本かるた協会「競技規程細則」第二章 第六条(服装・装着物)より引用

服装・装飾物で気を付けるポイント
  • 対戦者から見て、集中が出来ない・気が散るような揺れるものは必ず外す・固定する

このルールでのポイントは対戦者の邪魔となる・集中力を削ぐようなことを避けるという点にあります。

例えば、服装としてパーカー自体の着用こそ禁じられていませんが、フードについている「ドローコード(ひも)」については注意が必要です。
固定せずだらんとぶら下げたままになると、上記ルールとして禁止されている内容にあたるので、パーカーはひもなし、もしくはドローコード結ぶなどしてその場で固定できることが着用する際の必須条件となります。

髪型についても同様です。
長い髪の毛を結わえることなく垂れ下がったままにしておくこともさながら、まとめてはいるものの三つ編みなどでまとめた髪が札を取りに行くときに大きく揺れ視界に入るため、対戦者よりきちんと固定するよう指摘されたケースもあります。
ピン止め、ヘアゴムで結わえるなどして、構えた時に体前方に垂れ下がることがないように処置する必要があります。

試合会場に持ち込めるもの

飲み物

ルール上、飲み物の持ち込みは原則禁止となっています。

ただし、夏場の大会などで熱中症予防の観点から「審判長が特例として飲み物の持ち込みと試合中の水分補給を認める」という運用が基本となりつつあります。

飲み物の持ち込みと試合中の水分補給が可能な場合は、開会式で審判長が言及するので、その指示に従うようにしましょう。(言及がない場合は禁止のままです)

審判長の指示として何が考えられる?

飲み物の持ち込み、試合中の水分補給が認められた場合の運用として、明確な指針は存在しません。
そのため、各大会の審判長の判断次第となります。

ここでは考えられる指示の内容について以下にまとめます。大会の準備の参考にしてみてください。

  • 飲み物を持ち込めるのは、ペットボトルなどの密閉できるふた付きの容器のみ
  • 飲み物を置くのは会場のすみのスペース(手元には置けない
    補足 畳に持ち込める場合もあります。審判長の指示に従うようにしましょう。
  • 水分補給を理由に読みを止めない

必ずしもここに記載している指示があるとは限りませんし、記載のない指示がある可能性も十分あります。ご承知おきください。

正確なルール

競技者は、以下の行為をしてはならない。
(前略)
(2)競技中の飲食または喫煙。
(後略)


一般社団法人全日本かるた協会「競技規程細則」第九章 第二十七条(禁止行為)より引用

その他

ルール上、特に試合会場への持ち込みが禁止されているものはありません。
そのため、競技中に必要なものであれば、常識の範囲内で持ち込んで構いません

例えば、汗拭き用のタオルやハンカチ(汗拭き)、鼻をかむティッシュ、怪我した時用のばんそうこうなどの身の回りケアの物品、それらを収納するポーチについては持ち込みはまったく問題ないでしょう。

ただし、持ち込んだ物の下に札が入り込み、札を紛失する原因とならないような配慮を心がけましょう

例えば、羽織は暗記時間中に脱いで控室に置いてくるなど、できるだけ会場に持ち込まないように心がけましょう。審判長から羽織を試合会場外に置いてくるように指示があったこともあります。(特に狭い会場では要注意)

うちわ・扇子は使ってもよい?

エアコンがついていない会場など、やむをえない場合を除き、使用をさけた方が無難でしょう。

理由としては、以下が挙げられます。

  • あおぐ際に音が出る
  • 風が当たると不快に感じる方がいる
  • 特にあおぎ過ぎの場合、品位に欠ける
  • 競技かるたの試合に限らず、目上の方の前で使うものではない

ちなみに、「うちわ・扇子の使用の是非について」のTwitterアンケートを実施したところ、8割の方は肯定的な意見をお持ちのようでした。
ただ、マナーの基本的な考え方「対戦相手が気持ちよく試合できる」に立ち返ると、2割の方が不快な思いをすることになるため、避けた方が無難と言えるでしょう。

一方、肯定的な意見としては熱中症対策として有効との意見も散見されました。

夏場にエアコンの効いていない会場に限っては、熱中症対策の一つとして使用するのは許容されそうです。

和装(はかま)の場合

和装(はかま)を着用する場合は、和装に相応しい着こなしやアイテムを使用することが望ましいです。

特に大会で和装の着用が義務付けられている場合は、競技かるた界以外への対外的なアピールの側面も大きいため、見栄えに十分に配慮した着こなしや振る舞いが求められます。

例えば、以下について注意しましょう。

  • ひざの保護にヨガマットやタオルを使用しない(サポーターや座布団を使用する)
  • 着物がはだけないよう着付けをする(はだけた場合はすぐに直す)

🔰 初心者の方も、強くなってから大きな大会に出場する際に困らないよう、和装でも着用が可能なアイテムを使用して練習することを推奨します

※和装のルール・マナーの詳細については別途整理予定

大会・練習会場での振る舞い

競技中は音をたてない

選手は音に集中しています。そのため、試合会場内では音をできるだけたてないようにしましょう。

例えば
  • おしゃべりはしない
  • スマートフォンなどの電子機器の電源を切るか、バイブレーションも鳴らない設定にする
  • とびらを閉める時に音が響かないようにする

また、札が読まれている間は、動きや息を止め、一切の音が出ないように細心の注意を払います。

会場内の移動

まず、不必要な大会会場内、練習会場内の移動はしないようにしましょう。

試合終了後に報告に行く場合など、移動する必要がある場合は、基本的に選手が飛ばした札を拾っている、並べている時間にすみやかに移動しましょう。

例えば、空札でお手つきが少ない場合はすぐに次の札が読まれます。そのため、次の出札が読まれるまで待ちましょう。(試合が終了していても、立ち上がらないで待ちます。)

また、もし移動中に札が読まれ始めたら、即座にその場にかがんで、動かないようにします
その場にかがむのは選手の視界にできるだけ入らないようにして、集中力を妨げないようにするためです。(試合をしている選手から離れた場所を移動している場合は、かがむ必要はありません。)

試合の観戦

大会で試合を観戦する際は、運営スタッフの指示に従うようにします。

特に指示がない場合も、試合から少なくとも3.5メートル(畳4枚分)程度は離れて観戦します。その際は、試合中と同じように正座に準じた姿勢で観戦してください。(立てひざ、体操座り、足の投げ出しは禁止)

また、観戦する際の応援行為は禁止されています。声を出した応援に限らず、選手への身振り手振り、アイコンタクトはしないようにしましょう。

正確なルール

競技者は、以下の行為をしてはならない。
(前略)
(7)競技者や観客による、競技者への応援行為。
(後略)

  • (7)団体戦等である程度の応援が認められている場合を除き、原則として応援とみなされる行為をしてはいけない。

一般社団法人全日本かるた協会「競技規程細則」第九章 第二十七条(禁止行為)より引用